最近の話題 2010年1月16日

1.NVIDIAがTesla Bio Workbenchを発表

  2010年1月14日にNVIDIAは,同社のTesla GPUで効率よく実行できるバイオ関係のアプリケーションをダウンロード使用できる環境であるTesla Bio Workbenchを発表しました。

  Molecular Dynamics & Quantum Chemistryの分野では, AMBER, GROMACS, GROMOS (coming soon), HOOMD,  LAMMPS, NAMD, TeraChem (QC), VMD,そしてBio Informaticsの分野では, GPU-HMMER (coming soon) ,MUMmerGPU (coming soon), CUDASW++ (Smith-Waterman) (coming soon) などが提供予定となっています。これらのプログラムはGPUを利用することにより汎用CPUに比べて10〜20倍に高速に実行できるとしています。

  これらのプログラムの利用は,学術的な用途に対しては無料となっています。

  また,2010年1月14日のHPCwire記事によると,米国のスパコンをリンクするTeraGridシステムでの2008年度の計算の29%がバイオサイエンス関係で,これに加えて19%が化学や材料関係の同種の計算となっており。これらの計算がGPUで安価に実行できるようになる効果は大きいと思われます。

2.NTTがTileraに出資

  2010年1月14日にTilera社はNTT Finance Corporationからの出資を受け入れたと発表しました。しかし,出資額や出資比率は公表されていません。

  TileraはMITでAlewifeなどのマルチコアシステムの研究を引っ張ってきたAgarwal先生が設立した会社でマルチコアに関して先端的なチップを開発しています。2010年1月15日のTech-Onの記事によると,「マルチコア・プロセサに対するTileraの技術は,低消費電力とプログラミングの容易さを維持しながら,コアを多数化するというスケーリングの問題を解決する。同社の技術は,クラウド・コンピューティングや無線通信,ネットワーキング,ビデオなど,さまざまなアプリケーションにおいて,大幅な性能向上をもたらす」(NTTファイナンス社長)のが投資の理由だそうです。

  なお,Tileraの100コアプロセサについては昨年10月31日の話題で紹介しています。

3.DARPAがCrayスパコンの予算を削減

  2010年1月12日のThe Registerが,DARPAのHPCSプロジェクトでのCrayの開発費を$60M削減と報じています。HPCSは2006年11月25日の話題で紹介したように,2010年に重要アプリを実効1PFlopsで実行するマシンを開発することになっていた筈ですが,この報道では, この予定は遅れているようです。Phase-3の開始時点ではCrayの予算は$250Mだったのですが,それが,2012年の納入となり,かつ,幾つかの成果物が契約から削除されて,金額的には$60M減という線でDARPAとCrayが交渉を行っているとのことです。

  2009年の売上予想は$284Mで若干の赤字決算,というCrayにとって$60Mの売り上げ減は相当痛手でしょうね。

4.ARMはCortexのライセンス料率を引き上げ

  2010年1月14日のEE Timesが,ARM社は最新のコアであるCortex A8/A9のライセンス料率を1.1〜1.2%に引き上げたと報じています。これまでのARM11コアまでの料率は1%であったので,10〜20%の値上げとなります。

  但し,ライセンス料は,製造されたARMプロセサの値段に料率を掛けるので,最新のCortexコアの製品は少なく,収入の94%は古いARM7,ARM9ベース,5%がARM11ベースの製品からで,Cortexベースのライセンス収入は全体の1%に過ぎず,この値上げは短期的には業績に殆ど寄与しないようです。同社の2008年(2009年の決算は未発表)の決算では,売上比例のライセンス料は約$200M,コアの初期ライセンス売上が約$130Mとなっています。

5.SunがSPARC ENTERPRISE M3000のエンハンスを発表

  2010年1月12日に富士通とSunは,SPARC64 ZシングルソケットのローエンドサーバであるM3000のエンハンス版を発表しました。中身は,従来,2.53GHzクロックのCPUを2.75GHzに上げ,また,メモリを高速化して,全体としては23%性能をアップしたというもので,大した エンハンスではないのですが,Sunが,まだ,SPARCベースの新製品のアナウンスをしているのが不思議という感じでニュースになっています。

  先日,日経新聞に見開き全面で,右にOracle,左に富士通の広告を載せて,OracleはSPARC,SolarisとMySQLに対して,これまで
Sunが投資していた以上の投資を行う,そしてシステムの販売とサポートを行う人員を2倍以上に増やすというアピールを載せたのですが,2010年1月14日のThe Inquirerは,OracleはSunの人員の半分を削減するという,UBSのアナリストのBrent Thill氏のレポートを紹介しています。Sunはdotcomバブルの前の最盛期には5万人以上の従業員を抱えていたのですが,現在は2万7000人とピークからは,既に半減しています。開発投資を増やし,販売やサポートの人員を倍増というのと, 更に人員半減というのは話が合いませんが,投資会社のセンスから言うと,半減しないと儲かるようにはならないということでしょうか。

  また,2010年1月15日のCNETは,この人員半減は事実ではなく,全く根拠のない無責任な発言とのSunの反論を報道しています。

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