最近の話題 2011年2月5日

1.Sandy Bridgeのチップセットにバグ

  2011年1月31日にIntelは,Sandy Bridgeと一緒に使われるチップセットでCougar Pointのコードネームで開発されてきたIntel 6 Series ExpressとXeon用のC200チップセットに問題が発見されたと発表しました。ハードディスクやDVDドライブなどを接続するSATA Uポートが使っているうちに劣化し,性能が低下したり,動作しなくなるとのことです。

  2011年1月31日のCNETによると,このSATAポートの問題はポート2〜5のSATA Uだけで発生するとのことです。ポート0,1の高速のSATA Vポートでは発生しないので,通常のノートPCのようにポート0にハードディスク,ポート1にDVDドライブという環境では問題にならないようです。

  2011年1月31日のEETimesによると,IntelのSteve Smith氏は,ノートPCの更新までの3年の間にこの故障が出る確率は,通常の使用では5%,高温環境や使用頻度が高い場合は,この3倍程度になり得ると説明しています。このバグは,かなり上の層のメタル修正で直したとのことで,想像ですが,電源配線かSATA信号線かの配線が細いとかビアの数が不足とかで電流密度が若干基準オーバー になっており,製造ばらつきで線が細めになったりと悪い方に振れたチップは,時間が経つとマイグレーションで配線が切れるという類の問題ではないかと思われます。

  高温,高電圧での加速寿命試験はやっている筈ですが,これをSATA Uポートに負荷をつけた状態で稼働させながら行うのは難しいので,検出できなかったのではないかと思われます。

  現在のチップは即時出荷を停止し,修正版のチップが出てくるのは2月の遅い時期で,本格的に量産が立ち上がるのは4月とのことです。 修正が上層のメタルなので,下層までの仕掛ウェファは使えるので,最初の修正版がでるまでの時間は短かくなっています。

  チップセットはこれまでに800万個弱が出荷されたのですが,Sandy Bridgeベースのシステムは,まだ,あまり市場に出回っておらず,大部分はメーカーや流通チャネルにあると見られています。しかし,チップ単体ではなくマザーボードにはんだ付けされてしまうとマザーボード交換となってしまうので,修理費用は$700Mにのぼるとのことです。また,Sandy Bridgeベースのシステムの売り上げの立ち上がり時期が遅れることにより,$300M程度の減収になると見込んでいます。 ということで,このバグによる損失は$1B(約800億円)です。

2.IBMのDeepQAアーキテクチャ

  2011年2月3日のEETimesが,2月14日〜16日にJeopardy!で過去のチャンピオンと対戦するWatsonシステムのDeepQAと呼ぶアーキテクチャを紹介しています。 このJeopardy!対決については,昨年12月18日の話題と,今年の1月15日の話題で紹介しています。

  Watsonのハードウェアは市販のPOWER 750サーバ 90台のクラスタで,全体ではPOWER 7コアが2880個でピーク80TFlopsという非常に強力なシステムです。そして,2011年2月2日のHPCWireによると,OSはAIXではなく,SuseのSLES11だそうです。しかし,問題は その上で動くソフトウェアで,普通の英語の話し言葉の理解,大量のデータの解析,そしてスーパーコンピューティングが一体にならなければ,Jeopardy!には挑戦できません。IBMは24人年を掛けてPractical Intelligent Question Answering Technology (PIQUANT)とよぶシステムを開発したとのことです。

  そして,Watsonシステムは100GBの非構造なテキストベータベースを持っています。その情報ソースは人間のプレイヤーが使うのと同様で,百科事典,辞書,Wikipedia,シソーラス,ニュース,Webページ,Project Gutenbergから提供された電子ブックなどだそうです。ただし,これらのコンテントをそのまま入れるのではなく,Jeoperdy!に役立ちそうな有名な文句,場所,人などの情報を抜き出して,検索しやすい形に変換しているとのことです。

  Watsonは,ヒントの形で出される問題を解析して,どのようなタイプの答えを要求しているのか(Lexical Answer Type,LAT)を見つけます。このために2万以上の過去のJeoperdy!の問題を分析して2400のLATを抽出していますが,これらに含まれない新しいタイプの解答が要求される可能性 もあります。このLATを決める処理は1コアで行われますが,LATが決まると大量のコア並列で,質問の解答の候補を評価していきます。そして,分類学的,地理的,時代的,名前の妥当性など各種のチェックを行って解答候補を評価します。

  そして,最後は1コアで,マシンラーニングの階層と,統計的モデリングを使って,各解答候補の数100種にもおよぶ評価のスコアを統合して一つスコアを作り,解答の候補をランク付けします。そして,モニタには上位5位までの解答が表示されるそうです。

  なお,この辺の記述はEETimesの記事を(適当に)訳しているだけで,内容は理解していませんので,間違っているかもしれません。興味のある方は原文を見て下さい。

 

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